体外受精と着床障害
何回も体外受精を行って、妊娠できないときは、着床障害が疑われます。
着床障害とは、複数回(3~5回)体外受精を行っても妊娠検査薬が陰性になることです。
最近では、着床できない原因を専門に扱う着床障害(着床不全)外来を新設するクリニックや産婦人科が増えてきました。
中々妊娠できないときは、セカンドピニオンとして着床障害専門の外来を受診することも選択肢となります。
体外受精と胚盤胞移植
近年の生殖補助医療の進歩はめざましく、採卵成功率や胚移植成功率の向上はめざましいものがあります。
しかし、胚移植後の妊娠率は30%前後に留まっています。妊娠率が向上しない原因として、着床障害があると言われています。
このため、着床率の向上を目指して胚盤胞移植が行われるようになっています。
ここに胚盤胞移植を研究した報告があります。
参考:1)体外受精反復不成功例に対する胚盤胞移植より引用
胚盤胞移植を行った症例として、過去の体外受精治療において
①良好胚(grade 1 or 2 )を 5 個以上移植しても妊娠しない
② 9 個以上の胚を移植しても妊娠しない
③ 4 回以上胚移植を行っても妊娠しない
この3項目のうち1つでも満たした症例を体外受精反復不成功例として胚盤胞移植を行っています。
※体外受精反復不成功例とは?
体外受精反復不成功例とは、良好胚を何度移植しても妊娠が成立しない状態のことです。
胚が良好な状態grade 1 or 2を胚移植しても妊娠しないので、原因は着床する段階にあると考えられています。
この次は、胚盤胞移植の年齢と妊娠率、胚移植回数と妊娠率などについて詳しく紹介します。まだまだ続きます。
胚盤胞移植の年齢と妊娠率
実際の胚盤胞移植の年齢と妊娠率ですが、着床障害があるグループで30歳から34歳では40%の高い妊娠率が得られていますが、加齢とともに妊娠率は低下しています。
体外受精―胚移植の全症例の年齢別妊娠率の加齢による変化とほぼ同様という結果でした。
一方、着床障害を伴わないグループにおける胚盤胞移植では、35歳から39歳が92%、40歳から44歳が100%と高年齢でも非常に高い妊娠率となっています。
胚移植回数と妊娠率
過去に胚移植を行っている回数が多いほど妊娠率が低いということはないとされました。
つまり、胚移植の移植回数と妊娠率が関係がないということになります。
着床障害と胚の発育
着床障害があると思われる症例と胚の発育に問題があると思われる症例を比較すると、
■着床障害があると思われる症例
・胚盤胞到達率 47.3%
・妊娠率 25.0%
■胚の発育に問題があると思われる症例
・胚盤胞到達率 32.8%
・妊娠率 18.5%
このように、着床障害があると思われる症例のほうが妊娠率が高くなっていることが分かりました。
胚の発育に問題があると思われる症例でも妊娠率は18.5%と高く良好胚が確実に選択されていることも示唆されています。
移植した胚盤胞数と妊娠率と多胎率
着床障害と思われる症例における胚盤胞数と妊娠率と多胎率と障害がない症例を比較すると、
■着床障害と思われる症例
・1個移植 37%
・2個移植 25% 双胎1例
・3個移植 20% 双胎2例
■障害がない症例
・1個移植 67%
・2個移植 100% 双胎2例
・3個移植 56% 双胎3例
着床障害と思われる症例は、2個以上胚移植しても妊娠率が増加しないため、1個の移植が望ましいとされます。
以上のことから、年齢を考慮してみると着床障害に対する胚盤胞移植では、30歳~34歳で40%という高い妊娠率が得られたが,35歳以上では変わらない結果となっています。
従って、30歳~34歳では胚盤胞移植の有用性が認められるとしています。
一方、障害のない症例は、1個の胚盤胞移植でも67%と好成績で35歳~39歳が93%,40歳~44歳が100%という結果から、高齢(産婦人科的には35歳から)の高年齢の症例に対して有用性があると結論づけています。
生殖補助医療は、日進月歩の勢いで進歩しています。新しい治療法も出てきているので、何回も体外受精を行っても妊娠できない場合には、着床障害外来を受診するのも選択肢の一つです。

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葉酸サプリの選び方については、失敗しない!葉酸サプリの選び方で解説しています。こちらも併せて読んでみてみてください。
この他、着床障害全般については着床障害(着床不全)とは?で、着床後の症状については着床後の症状まとめています。読んでみてください。
妊娠超初期については妊娠超初期で、妊娠初期に気をつけることは妊娠初期に気をつけることで解説しました。
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