超音波検査(経膣エコー)
超音波検査(経膣エコー)は不妊検査の一環として行われる検査です。超音波検査には経腹超音波(経腹エコー)と経膣エコーがありますが検査内容によって使い分けられます。
超音波検査はどんな検査?
超音波検査は、膣内にプローブと呼ばれる超音波を発生させる機器を挿入して行います。子宮や卵巣の状態がよく分かるので一般的に用いられている検査です。
超音波検査の費用は?
保険が適用になる場合、その金額に含まれますが、月一回までと決まっています。月一回以上超音波検査を受けると自己負担となることが多いようです。
自費で経膣エコーを受ける場合は1回当たり1500円~3000円程度の費用です。施設によって違いがあるので確認してみてください。
超音波検査でどんなことが分かるの?
主に子宮や卵巣の状態が把握できます。子宮頚がんや子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、卵巣嚢腫、チョコレート嚢胞、卵巣がんなども分かります。
また、卵胞も確認できるので正確な排卵日が分かるようになります。黄体期に検査することで黄体化未破裂卵胞も分かります。子宮内膜の厚さや卵胞の成熟度も分かり不妊治療にはなくてはならない検査となっています。
■子宮内膜の厚さ
子宮内膜の厚さは、一般的に排卵期で8mm以上、黄体期で10mm以上が理想とするものが多いようです。しかし、これより内膜の厚さが薄くても妊娠しないということではありません。
子宮内膜の厚さを気にするより、お酒やたばこを控えるなど生活習慣を見直し、血流を改善し妊娠しやすい体を作っていくことが大切なような気がします。
子宮内膜の病気である子宮内膜症については子宮内膜症で詳しく説明しています。
■子宮頚がん
子宮頚がんは、子宮の入り口周辺に発生する癌です。子宮には体部と頸部、卵管などから構成されていて子宮頸部にできる癌を子宮頚がんと呼びます。症状が進むと子宮を全摘出しなければならなくなり、今後の生活に大きな影響を及ぼします。定期的に検診を受けることで早期発見できて子宮を取らずに治療することも可能です。
子宮頚がんは2種類に分類することができて、表面の組織扁平上皮(へんぺいじょうひ)からできた扁平上皮がん、粘液を出す細胞からできる腺(せん)がんに分けられます。
一般的に検診では腺がんが見つかりにくく治療も難しいとされています。以前は40歳以降が最もかかりやすかったのですが、最近では20代、30代の人でも罹患し、30歳後半が最も多く罹患しています。
◆子宮頚がんの症状
ほとんどの場合が無症状です。がんが進行してくると性交時に出血、おりものが増加、不正出血、腰や腹部の痛みが起こるときもあります。
◆子宮頚がんの原因
子宮頚がんは、原因のほとんどがヒトパピローマウイルスと考えられています。ヒトパピローマウイルスは性交経験から感染すると考えられていて20代から30代で急速に増えつつあります。
◆子宮頚がんにはワクチン
近年の研究で、子宮頚がんにはワクチンが有効であることが分かりました。日本でも平成21年12月からワクチン接種が可能となっています。ワクチンを接種する時期は10代前半が望ましいとされています。
◆子宮頚がんの治療
子宮頚がんを治療する方法は3つあって、摘出手術・放射線療法・化学療法があります。妊娠や出産を希望する場合は、レーザー治療や子宮頸部を円錐型に切除する手術が行われます。放射線療法は、外部から放射線を当てる方法と膣内から放射線を当てる方法とが組み合わせて実施されます。最近では抗がん薬(シスプラチン)を組み合わせた方法も実施されています。
このように妊娠と子宮頚がんは密接な関係があります。20歳以上なら2年に1回の検診が進められています。

妊娠前から初期にかけて葉酸を摂取することで、先天性の異常である、「神経管閉鎖障害」のリスクを70%も低減できることが分かっています。
日頃から、十分な量の葉酸を摂取することが大切です。
詳しくは、下記ページで説明しています。読んでみてください。
●妊娠前・初期に絶対必要な葉酸

赤ちゃんとママの明るい将来のためにも、今すぐ葉酸を摂取するようにしてくださいね。
葉酸サプリの選び方については、失敗しない!葉酸サプリの選び方で解説しています。こちらも併せて読んでみてみてください。
■子宮筋腫
子宮筋腫は子宮内にできる良性の腫瘍です。大きくなるまでは自覚症状がないので、気がつかない人も多いようです。女性ホルモンによって発育する腫瘍で子宮の内側にできたものを粘膜下筋腫、筋肉の中にできたものを筋層内筋腫、子宮の外側にできたものを漿膜下筋腫といいます。
子宮の内側にできたものは、出血の原因となり月経痛がひどくなったりします。症状が進むと月経以外にも出血したり腰が痛くなったりトイレが近くなったりする症状が現れるようになります。
大きなものになると10kg以上あるのものあります。特に大きな子宮筋腫の中には、まれに(0.5%)悪性のものが含まれます。悪性との鑑別は年齢や大きくなるスピードで判断されます。
子宮筋腫については子宮筋腫で説明しています。
◆子宮筋腫の原因
子宮筋腫の原因は諸説あるようでまだ分かっていません。子宮平滑筋細胞が何らかの原因で他の場所に根付いて、初潮を迎えた頃から性ステロイドホルモンによって大きくなっていく説もあります。
◆子宮筋腫の症状
ほとんどが無症状ですが、過多月経,月経困難症を伴うこともあります。圧痛を伴うこともあります。
◆子宮筋腫の治療
治療が必要なのは全体の約1割程度です。妊娠を望む場合は筋腫だけを取り除く子宮筋腫核出術が行われます。40歳以上になると子宮全摘も選択肢となります。
最近では技術が進歩し腹腔鏡下で手術することも多くなってきました。先ほども言いましたが全ての症例で手術を行うわけではなく、年齢や症状、妊娠希望などたくさんのことを総合的に判断して手術となります。
外科的な手術の他に薬物療法もあります。血中エストロゲンを低下させて擬似的に閉経状態にして筋腫の成長を抑える方法です。この療法は6ヶ月しか行えません。副作用として骨粗しょう症などになる場合があります。
子宮筋腫を栄養する血管を塞ぐ子宮動脈塞栓術も試験的に行われていますが、保険適用にはなっていません。
■子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープとは、子宮の内膜にできる良性の腫瘍です。一度に数個できることも多く、不妊原因の一つではないかと言われています。子宮頸部にできるポリープは子宮頸管ポリープと言われます。
主に40代~50代に多く、子宮口壁に発生することが多い病気です。症状は不正出血が最も多く、これによって貧血になっている場合があります。経膣超音波検査が用いられている検査です。
子宮内膜ポリープの疑いがあると、悪性を否定するために内膜細胞診が行われます。ほとんどは良性ですが、0.8%は悪性と診断されています。子宮内膜ポリープの詳しい説明は子宮内膜ポリープに掲載しています。
◆子宮内膜ポリープの症状
ほとんどの場合が無症状です。
◆子宮内膜ポリープの治療
子宮内膜ポリープの治療は、子宮鏡下で行われることが望ましいとされます。不妊の人に子宮鏡下ポリープ摘出術を行うと有意に妊娠率が上がると報告されています。場所や個数には関係ないとされます。特に卵管角にできたポリープを切除することで妊娠率を上げることができるようです。
■子宮腺筋症(adenomyosis)
子宮腺筋症とは、子宮の筋層内に何らかの原因で子宮内膜が増殖していく病気です。最近では症例も増えてきていて晩婚化の影響や若年層の症例の増加が目立ってきています。月経ごとに出血を繰り返すため、強い月経痛を伴う場合があります。
診断には超音波検査とMRIが行われるのが一般的です。
◆子宮腺筋症の原因
子宮腺筋症の原因はよく分かっていません。内膜基底層の腺管が筋層内へ進入したとする説が有力です。
◆子宮腺筋症の症状
子宮腺筋症の症状は、過多月経・不正出血・月経困難症・骨盤痛・不妊症などがあります。しかし全体の3割程度は無症状です。
◆子宮腺筋症の治療
症状が軽い場合は経過観察となります。対症療法としてNSAIDs・鎮痙剤,鉄剤・止血剤などが投与されます。ホルモン療法としてGnRH アゴニストやダナゾールが用いられます。ピルは症状が悪化するため用いられません。
妊娠を望まない場合には子宮摘除も考慮されますが、妊娠や出産を望む場合には腺筋症核出術が行われるようです。
■卵巣嚢腫
卵巣嚢腫と言えば、誰もが聞いたことがある病気です。卵巣にできた袋状のものに内容物が溜まっていき大きくなる病気です。正常な人でも5cmぐらいまで大きくなることがあり卵巣嚢腫とは違うこともあるようです。中身が液状のものは良性であることが多いようです。
診断には、超音波検査やMRIが用いられます。
◆卵巣嚢腫の原因
卵巣嚢腫の原因は多岐に渡ります。子宮内膜症に起因するものや卵巣癌に起因するものなどです。
◆卵巣嚢腫の症状
自覚症状がない場合が多いです。のう腫が比較的大きくなってから出てくる症状もあり、下腹部痛や膨満感を感じます。他の子宮内膜症や子宮腺筋症などのような症状が出にくいので発見が遅れる場合も多いです。
◆卵巣嚢腫の治療
卵巣嚢腫の治療は、10cm以下であれば腹腔鏡で腫瘍摘出術が対象となります。これ以上大きいものや悪性腫瘍が疑われる場合は外科的な開腹手術が選択されます。
卵巣癌など悪性の場合は化学療法も適用となります。
■チョコレート嚢胞
チョコレート嚢胞とは、卵巣内で子宮内膜症が起こり、そこから出血したものが袋状に溜まってしまう病気です。内容物が古い血液などで構成されるためチョコレートのような色に見えるためチョコレート嚢胞(チョコレート嚢腫)と呼ばれます。
子宮内膜症の一種なので、炎症を起こして周りの組織や臓器と癒着が起こります。これが卵管などに癒着してしまうと卵管閉塞が起こり不妊の原因となります。
◆チョコレート嚢胞の原因
チョコレート嚢胞の原因としては、月経血が逆流し子宮内膜の組織がくっついて増殖する説や何らかの原因で組織変化が起こり子宮内膜症となる説があります。
診断には超音波検査・MRI・CTが用いられます。
◆チョコレート嚢胞の治療
チョコレート嚢胞の治療は、薬物療法と手術適応があります。一般的にのう腫の大きさが5cm以下であればホルモン療法になるようです。これ以上の大きさは手術適応となります。手術は全摘出と実質を残す核出術があります。
妊娠や出産を希望する場合は、核出術が行われることになります。
チョコレート嚢胞は卵巣癌に進展することが知られています。チョコレート嚢胞が疑われる場合にはすぐに婦人科を受診しましょう。
■卵巣がん
卵巣がんは卵巣腫瘍の一種で、原発性卵巣がんと転移性卵巣がんとに分けられます。自覚症状がほとんどないため発見されにくい病気として知られています。お腹に腹水が大量に貯まりはじめて気がつくこともあります。
◆卵巣がんの原因
卵巣がんの原因は、卵巣に起因する場合と胃がんや大腸がんなどからの転移があります。卵巣は様々な組織から成り立っているため色々な形態で腫瘍を形成しています。欧米で多い病気で日本でも増加傾向にあると言われています。
診断には超音波検査やMRI・CT・血液検査などが用いられます。
◆卵巣がんの症状
症状がないため発見が遅れる場合が多く報告されています。
◆卵巣がんの治療
早期の卵巣がんには治療が期待できますが、進行したものについては難しいとされます。特に転移性卵巣がんの場合は、胃がんや大腸がんがあり全身に転移している場合も多く、抗がん剤と手術を併用することもあるようです。家族性因子も指摘されていて、遺伝的な側面も持っています。
超音波検査は不妊検査に重要な意味を持つ検査なので、スクリーニングとして不妊検査の中に組み込まれています。
不妊の原因については不妊の原因で特集を組んでいます。参考にしてください。