多嚢胞性卵巣症候群とクロミフェン
多嚢胞性卵巣症候群と診断されて妊娠を希望する場合、排卵を誘発させる目的でクロミフェン(クロミッド)が処方されます。クロミフェンは不妊治療の中で多く使われている内服薬で自然排卵があるときでも処方されることがあります。
商品名はクロミッド、フェミロン、セロフェンなどです。
クロミッドは排卵誘発ホルモン製剤でクロミフェンクエン酸塩です。同じような作用をもつ薬でシクロフェニル(セキソビット)があります。セキソビットはクロミッドに比べて効き目が穏やかで頸管粘液の減少や子宮内膜が薄くなるなどの副作用も少ないとされています。
クロミフェンは脳に働きかける
クロミフェンは脳の視床下部に働きかけて卵胞刺激ホルモン(エストロゲン)の分泌を促す働きがあります。POCSで排卵できない人は、アンドロゲンやLHが高い数値を示すことがあり、エストロゲンが増えることで数値が正常に近くなって排卵が起こります。
飲み方としては、生理開始後2~5日後から毎日5日間、一日一錠を服用します。薬を飲み終えてから一週間から二週間後に排卵が起こります。
これで排卵が起きない場合には、一日二錠に増やして5日間服用します。これでも排卵が起きないなら一日三錠に増やすか注射による排卵誘発を行います。一日三錠に増やすときは、社会保険が適用できないので自費扱いになります。
クロミフェンでの排卵率
クロミフェンを服用することで、約70%の人に自然排卵が起こるようになります。そのうち妊娠する人の割合は約30%です。
クロミフェンの副作用
クロミフェンを継続して使用することにより、子宮頸管粘液の減少(精子が通りにくくなる)子宮内膜の発育抑制(子宮内膜が厚くならないので着床しにくくなる)などがあります。また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になったり多胎妊娠(約5%)になる可能性があります。
この他にもお腹の張りやのぼせ、めまいがあります。希に目が見えにくくなる症状もあるようです。
クロミフェンでも排卵できないときは
クロミフェンを服用して用量を増やしても排卵が起きないときにはHMG-HCG療法(脳下垂体ホルモンの注射)かシクロフェニル(セキソビット)の内服に移行します。
HMG-HCG療法の注射は非常に強力で排卵できる人も多くいます。しかし、副作用もあり特に多嚢胞性卵巣症候群と診断された人は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすいことが報告されています。
OHSSは注射の影響で卵巣が腫れ上がり、お腹に水が貯まったり重篤な時には死亡することもある疾患です。OHSSを避けるため、しっかりとした管理の中で注射をしていきます。
シクロフェニルは、クロミフェンより穏やかな効き目なのですが、クロミフェンで排卵が起きなかった場合に用いることで排卵が起こったケースもあり投与されるようです。
POCS人は通常より過敏に反応するため、慎重に治療法が選択されています。
クロミフェンは男性不妊にも
クロミフェンは男性不妊の治療にも用いられることがあります。主に乏精子・精子無力症などに用いられます。エストロゲンを低下させることで精子を作り機能を促進させます。
文献によって違いがありますが、継続投与して1~10%に妊娠率の上昇がみられたと報告があります。
クロミフェン製剤についてはクロミフェンで詳しく説明しています。参考にしてください。
POCSについては多嚢胞性卵巣症候群でまとめています。参考にしてください。
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